NO.2

 


 

ノート

風四月 白いノートを買いに行く

 むずかしい顔でポルノを読んでいる

  プランターの花が背伸びをして困る

   二重ロック 人間なんて悲しいね

    血の濃さの中でジョークを考える

     臍の緒を切れば戦がやってくる

                          



郷愁

郷愁や 外人墓地は海を向く

  港町 ママの英語はブロークン

   国境のようにネオンの灯がともり

    おもしろいことに尾を振るヒトがいる

    人間は脱ぎ捨てられぬ乱れ篭

     花束の中の殺意に気づかない




蝉しぐれ

蝉しぐれめぐる八月十五日

 ひまわりの色が妥協を許さない

  悲しみを笑い袋に閉じ込める
 
   勝者にもまた敗者にも陽は昇る

    中央に座して無色の独楽になる

     雑巾が乾いたままで喪が明ける



埴輪

迷いから覚めて埴輪の目と出会う

 秋灯下 妻が読んでるクリスティ

  蔵書印ペタンと妻に捺してみる 

   仁王様の笑顔に誰も気づかない

    晴れた日の少女 雷雲ひとつ持ち

     ペンライトこんなに闇が美しい




霊柩車

春爛漫 のんびり進む 霊柩車

 弁当の蓋を開けば黙示録

  僕の案飲み込んでゆくシュレッダー

   丸すぎる父の背中を追い越せぬ

    偏差値の死角でつくる雪ダルマ

      豆の数 罪の数かも知れないな




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