NO.3 |
女子寮 |
女子寮の風紀を乱す春の猫 |
君知るや胸の谷間の貯金箱 |
物好きな男を騙すつけ黒子 |
媚びを売る花を花屋に選ばせる |
恋をするときもパンダは監視され |
月ばかりほめて私を口説かない |
団子虫 |
団子虫ころころ春にたどり着く |
定年の日から首輪のない不安 |
先輩の跡が残っていた踏み絵 |
前列に出ると世間の風当たり |
消しゴムの屑に本音が書いてある |
父の日の父にゴロ寝をさせてくれ |
画鋲 |
一本の画鋲となって天を向く |
夕焼けの中へ背広を脱ぎ捨てる |
笑い茸で死ぬ苦しさは分かるまい |
指切りの日から小指が重くなる |
頬杖をついて少女に戻れない |
銃口の先に名刺を置いてくる |
屋台 |
屋台の灯 落として街を眠らせる |
マネキンのようにはゆかぬ試着室 |
通帳に男嫌いと書いてある |
一言を一言でいういい祝辞 |
コスモスの闇でやさしい鬼を待つ |
方程式の向こうにいつもいる女 |
執行猶予 |
執行猶予の主文を妻が読み上げる |
ふがいない男を待たす春の雨 |
持ち駒の歩には金だと言いきかす |
タイムマシンに乗ってカードが攻めてくる |
味噌つけて焼いてグルメの知らぬ味 |
ひねっても何も出ぬ日がきっと来る |
No.2 | No.4 |
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