NO.5

 



奢り

人間の奢り 二月のサクランボ

 チェーンソーの音が悲鳴に聞こえぬか

  原発で缶コーヒーを温める

   飢餓の子へ届かぬ米が穫れすぎる

    夏の戯画 賽の河原に缶を積む

     三度食う なんと倖せなんだろう

                            



隙間

ドアチェーンほどの隙間を見せておく

 人妻のうなじに溜まる私小説

  海老天の尻尾 成仏できぬまま

   太陽を知らぬトマトが甘すぎる

    戦場へ向かう立ち食いそばの列

     もう誰も起こしに来ない突然死




遮断機

気まぐれな女神が遮断機を上げる

 ガムを噛む少女よ明日はまぶしいか

  生年月日を食べてしまった深海魚

   返り血を浴びる切り札かも知れぬ

    完全看護という名のベルが置いてある

     今日もまたファウルチップで食いつなぐ




回転寿司 

   
大臣を乗せる回転寿司の皿             

 カプセルホテル鎧をつけたまま眠る

  竹トンボくらいは翔べるかも知れぬ

   峰打ちの美学へ死んだふりをする

    つじつまの合わぬ話がよく分かる

     休戦宣言りんごが皿に盛ってある




哲学書

哲学書ゴルフの本に似ているな

 色即是空なぜか請求書が溜まる

  弾の来ぬ場所で男が干からびる

   宝くじ当たればきっとケチになる

    どんぐりの位置で矢尻を研いでいる

     この石を蹴ったら僕の負けになる




No.     No6.



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