8月2日、深夜のこと。
4年ぶりの通常開催「青森ねぶた祭」の中継の初日を終えて、ふわふわと気持ち良く帰宅した。中継の本番前には食事は摂らないようにしているので、手つかずのお昼弁当をつまんで晩酌しながら、ねぶたの再放送を楽しんでいると突然、家のブレーカが落ちた。
スマホの豆灯りを頼りに配電盤を探ると、大本のブレーカは落ちていなくて、漏電ブレーカがうなだれていた。さらにそれは小さく焼け焦げている。一瞬にして「テレビも無(ね)、ラジオも無(ね)」の世界へワープしてしまった。後に電気工事屋さんに「よく火事にならなかったよね」とひとしきり感心された。悪運が強い。
サウナ状態の熱帯夜6日間を過ごした。早めに対処しろと、友人知人からの忠告がかまびすしかったが、年間で最も多忙期にあって、そんな余裕などない、とじょっぱりを通した。毎夜毎夜、ねぶたが夢に出て、朝方まで武者が襲い掛かってくる。例年になく天が焦げる。
8月8日の朝、ねぶた祭り明け。この時期の電気工事屋さんもまた忙しい時期に当たっていたようで、あちらこちらと連絡しても断られる。湧き出る汗が冷や汗に代わる頃にようやく対処してもらえた。
天使のごとくに現れた電気屋さんは「部品の在庫がなければ注文になります。工事はお盆明けになります」とおっしゃる。山頂が見えてからが長い、あの八甲田大岳の登山道に差し掛かったかのような心地だった。ぞっとした。氏は在庫確認のため、会社に戻るという。
・・・この6日間は家の中でのソロキャンプだった。縄文世界を垣間見た日々だった。もはや「普通の日々」を忘れかけている。ややあって件の工事屋さんが、該当する部品を持って現れた。私は平身低頭する。どんな神様よりもあなたが一番、偉い。ドライバーと指先ひとつで、天岩戸を開けられるなんて。この先あなたを「陸奥国無礼可雷電神」と呼ぶ。読み方は自由です。