その105「ノストラダムスの、天気予報」

「ノストラダムスの、天気予報」

「2024の8の月。22の林が風を呼び、22の光る武者が闇を支配する。花かんむりを戴いた群衆が7つの太陽を見た時、三角の塔を火花が包み、民に選ばれし4武者が、厄を乗せ、大海原へと漕ぎ出すだろう。海は凪。晴れのちくもり。お洗濯日和。(詩編)」

預言者として名高いノストラダムスの天気予報があれば、私たちは、暗喩だらけの、幻想的な日々を送ることができるだろう。彼は、ルネサンス期のフランスの医師で、また天文学ないしは占星術を学んだという。南仏でのペストの流行時、積極的に治療に当たった人だ。決して、怪しげなだけの人物ではない。

科学はすべてを解決したというわけではない。健康オタクならお分かりかと思う。「大豆は体に良い」。「否、消化に悪いので過剰摂取はよくない」。「3食、規則正しく食べるのが良い」。「否、空腹時に食べるのがより自然だ。」専門家の意見ですら食い違う。何を信じてよいものか。「水は一日2ℓ飲む必要がある」。「否、そんなにいらない」。「日本酒は一日一合まで。」「それよりも、休肝日を作ること」。意見はそれぞれで、矢鱈と「最新の研究では」という文句が横行している。舌の根の乾かぬうちに、逆の情報が臆面もなく現れる。

かつて、そんな風評など馬耳東風の酒好きのオヤジがいた。カカァは傍でこそこそしている。手元の小ビンには、市販の、一滴二滴で酒がまずくなる薬物が入っている。最後の手段なのだ。何も知らないオヤジが口に茶碗酒を運んだ。ぐいと含んで、表情が曇る。辺りを睥睨し、一思案したあとでオヤジはぽつりと一言、「お前。一服、盛りやがったナ・・・」。

さて。ノストラダムスは、医者様だ。昔の酒飲みオヤジには何度も小言を言ったに違いない。「恐怖の大王が、うわばみと企んで、お前の魂を売ってくれと言っている」。「センセ、脅かさないで下さいヨ」。「ところで、一日、どれくらい飲む?」「3合くらいですかね」。「(カルテに書く) 6合ね・・・」。「あのぉ。」「ん?」。「・・・おみそれいたしました。」