その116「食べ物は粗末にしません」

「食べ物は粗末にしません」

来日したメジャーリーグの人が、日本食を食べて、「旨(め)じゃあ!」って喋べったんだど。気持ちは有難いが、彼らがわざわざ津軽弁で感嘆するはずもない。

食事は腹八分目が良いとされる。面白いことに、120から年齢を差し引いた数字が、健康に良い分量だと聞いた。例えば、120から20(歳)を引いて、100。20歳代は100%、つまり満腹で良い。40(歳)を引くと80になるので、40歳代は腹八分目が良い。120歳になればゼロだから、カスミを食っても生きられる年齢、というオチがつく。仙人の領域に入る。

お相撲さんは「ちゃんこ」を頑張って食べる。食事も稽古のうちだという。相撲部屋は親方が親で、力士たちが子供、家族のように暮らしている。「ちゃん」はお父ちゃん(親方)のことだ、という説を聞く。だから、部屋では和食に限らず食べ物は全てちゃんこなのだ。 

マラソン選手も又、頑張って食べる。身体を軽くするために少食かと思いきや、逆だった。長距離走に耐え得るエネルギーを蓄えねばならない。福士加代子さんから直接聞いた話である。

さて。宮澤賢治は、雨ニモマケズで「一日に玄米四合と味噌と少しの野菜」と書いた。執筆当時(昭和6年)、一日四合は当たり前だったのか。あまり頑健ではなかった彼は、農家(肉体労働)の食生活を理想とし、「そういうものに私はなりた」かった、という解釈がある。

現在ベストセラーの「続・日本軍兵士」(吉田裕著・中公新書)によれば、大正2年頃の陸軍の一日の主食の定量は、精米4合2勺(しゃく)・精麦1合8勺。計6合だった。貧困なお菜(副食物)を炭水化物で補っている。しかしそれも、長くは続かない。いわゆる「さきの大戦」の末期には、仲間同士の食べ物の奪い合いにまで発展する飢餓が訪れる。

農家だった我が家では、ご飯を粗末にすれば重罪だった。少し残しても前科五犯(ごはん)?に、匹敵。ちゃん(親)はそんな剣幕だった。さて。話がまとまらないので、最後にひとこと。  マイナーリーグの人も、日本食を食べて、「旨(ま)いなぁ!」って喋べったんだど。