✽いっくんの紙面散歩はこの回をもちまして終了となります。長きにわたり ご愛読いただきましてありがとうございました。                                                                      その129「曲者者じゃ!!  出あえ!!」

「曲者者じゃ!!  出あえ!!」

 進学・就職。いよいよ新たな環境にも慣れて来て、山場の五月病を乗り越えれば、ホッと一息つける。そして本来の自分を取り戻す時期を迎える。ご案内の通りどんな団体・集団にもひと癖もふた癖もある人物が存在する。世界は曲者揃い、油断は大敵だ。

 なぜか。すっかり忘れていたJ先生という方がいた。中学生の頃の私は四コマ漫画に凝っていて、せっせと描いてはクラス内で回覧していた。授業中である。主人公のモデルは担任のJ先生で、細身で髪の毛がもじゃもじゃ、人生を達観したかのような笑みを浮かべ、爪楊枝をくわえてもいないのに、くわえている印象を与えていた。漫画の主人公にするほど人好きのする先生を私はなぜ忘れていたか。

 一例である。J先生の専門は社会科だが、音楽が得意な先生は、クラス対抗の合唱大会に力を入れていた。「今日は昼休み時間に屋上で練習!」。時間になってぞろぞろと屋上に向かた。「では、一回歌ってみよう。」何回か繰り返していると、先生から「ストップ」がかかった。「Bくん、君は口パクにしろ」。ありえない。Bくんは後にタクシー運転手になり難関といわれる個人タクシーの資格を得る。私が乗り込むと、未だに「あれは失礼だよナ」と愚痴っている。Bくんの恨みをよそに学年対抗の大会では優勝してしまったのだから恐ろしい。

 まだある。北海道に修学旅行に出かけた時の事。名所旧跡を見学した後の、恒例の集合写真でのこと。当然、一クラス一台のバスには専属のバスガイドさんがついていて、妙齢のガイドさんたちは案内の小旗を持ちながら写真の端っこで笑顔を向ける。ところがJ先生は、「あんたに代わってくれ」と、ちゃっかり隣りのクラスのガイドさんを連れて来ていた。こればっかりは好みの問題ではない。底知れない異変が起こっている。

 これまで、個性的な先生をたくさん見てきたが、やってはいけないコントを地でいったJ先生に勝てる個性はなかった。何かがすれすれで危うい。

 これもBくんの逸話である。クラスでの朝礼。「規律」「礼」(おはようございます!)「着席」。すかさずJ先生が「Bくん、今朝、ツラ洗ってきたか?」ありえない。世界には、確かに鬼も蛇もいる。密かに。