その70「サイボーグ017」

サイボーグ017

 肉体改造。いまさら、マッチョでもない。中高年の域をとうに過ぎて、体力の衰えとあちらこちらの身体の痛みから、今では、補助具とも言うべき代物が不可欠となった。

エキスパンダーや鉄アレイは、卒業、というより中途退学した。体力増強には走ったり、マメに腹筋運動をすれば済むだけの話なのだが、それらは悉く億劫なのである。

単純に新しい玩具が欲しいのである。腰が痛い、腹が出っ張ってきた、加齢から足腰が弱くなってきた。その時々にいろいろと試してみた。腹巻ふうの「電子・腹ひっこめ機(正式名は失念)」は、腹がひっこむ前に壊れてしまった。そして、人気商品はそのうち安価な類似品が出回るという経済パターンも分かった。昨今は、足を乗せるだけで足腰が鍛えられるという極上マシーンを入手した。これは買ったばかりで、まだ効果の程は分からない。

 まだある。足元から順に紹介すれば、外反母趾を防ぐ足指ガード、ふくらはぎ用のサポーター(いわばゲートル)、引力に逆らって血流を上昇させる足首から太腿までのロングソックス、一般的な腰痛ベルト、骨盤矯正用の加圧下着。頭髪は当然、黒染めである。さらに、低反発式のマットレスで安眠。その他、健康サプリメント。古い器具を含めるとまだまだある。 

 歳には勝てず。私の生れ年には吉田さんと言う人が、バカヤロー、と言ったそうだ。

 その、遥か昔、少年時代のこと。子供は風の子で、野外を走り回って疲れた時に、ふと思案した瞬間があった。「僕は子供だから疲れるのだ。(完成形の)大人になれば、疲れることはなくなるはずだ。」甚だしい誤解のまま、早く大人になりたいと思っていた。かくして私は頑健なはずの大人時代を通り越し、おむすびを持って山に柴刈りに行く年齢に至った。

 同じような方は決して少なくないと思う。素のままでは何かと不如意。サイボーグだ。本州最北に生きる、人呼んで、青森市の市外局番をつけて、そう「サイボーグ017」としたい。